マルチビーム形指向性アレースピーカによる広受聴域音像定位のステレオ再生法

摘要

通常のステレオ再生では，左右のスピーカの正面中央の受聴域付近以外では先行音効果により音像が片方のスピーカに引き付けられ，両スピーカの中央付近には定位しない．本研究では，線状スピーカアレーと2次元ディジタルフィルタによる指向性アレースピーカを用いてマルチビームを形成して，より広範囲で良好な音像定位を可能とするステレオ再生の方法を提案し，片側だけアレースピーカとしたビーム数3の場合のシステムの実現について検討を行っている．左右のスピーカの配置幅を1.5mとして構築した実験システムで試聴実験を行って広い受聴域で良好な定位が得られていることを確認している．更に，左右のスピーカ配置を6mに広くした場合でも同様に良好な音像定位を与えることができること，マルチビーム内での合成音における音像の時間的広がりも特に問題にならないことなどを示している．