千葉県北東部の谷津田におけるトウキョウサンシヨウウオHynobius tokyoensisの産卵場の分布及びその周辺環境

摘要

トウキョウサンシヨウウオ（Hynobius tokyoensis）は，主に関東地方の太平洋側の低い丘陵地に生息する止水性のサンシヨウウオで，主に山間の水田や湧水の溜まった水場と，その周囲の斜面林の林床部をそれぞれ繁殖と生活の場所としている（早瀬·山根1989；草野·川上1999；小賀野ほか2010）．本種が主に生息する低高度の丘陵地は，山林の伐採や宅地造成，水田の耕地整理などの開発に伴う人為的な土地利用改変の影響を受けやすいため，生息域内の各地で生息個体数や産卵数の減少が報告されている（草野：川上1999；青柳·林2004；小賀野ほか2008；早瀬2012）．彼らの生息環境を保全するには，谷津田や谷の水源に当たる谷頭部の環境と，その背後の斜面植生の二つの環境をセットで保全するだけでなく，二つの環境要素間の空間的な連続性を保つことが極めて重要である（草野·川上1999；小賀野ほか2007a；長谷川2011）．