円管摩擦圧接の摩擦トルクに及ぼす円管内径の影響

摘要

著者らは，摩擦圧接の接合メカニズムを解明するために，これまでに摩擦過程中の第1位相における接合現象について中実丸棒を用いて様々な検討を行ってきた．さらに，これらの結果を踏まえ，接合する母材物性値と圧接条件をパラメータとして第1位相における摩擦トルクのシミュレーション方法を提案し，圧接面の焼付温度における母材降伏強度から初期トルクの値を簡易的に推定する方法を示した．しかし，これらの現象はいずれも中実丸棒同士の場合であり，円管の場合では圧接面の中央部が存在しないことから中央部から焼付くことはない．また，円管の場合，中実丸棒同士の場合よりも圧接面内における相対速度差の範囲が狭くなることから，中実丸棒同士の接合現象とは大きく異なると考えられる．ところで，実際に摩擦圧接法を利用した製品は，ドライブシャフト，アルミホイール，エアバック部品などの自動車用部品から，圧力容器や油圧バルブなどの産業用部品まで多種多様である．これらの製品は，中実丸棒同士はもとより円管同士，中実丸棒と円管とを組み合わせて製作されることが多い．しかしながら，円管の摩擦圧接に関する報告は少なく，ステンレス鋼管同士，アルミニウム管同士，ポリエチレン管同士，アルミニウム合金管／ステンレス鋼管などの組み合わせが報告されているにすぎない．これらの報告で円管の摩擦圧接現象が明らかにされつつあるものの，圧接条件，試験片形状，円管内径などがいずれも異なるために接合現象が十分解明されているとは言い難い．また，中実丸棒同士の摩擦圧接で示したように摩擦トルク，特に初期トルクは強度の高い健全な継手を得るための圧接条件選定に対して有効な指標となるものの，円管の摩擦圧接における初期トルクに関する知見はほとんど得られていない．そこで本研究では，鋼材円管の摩擦圧接における摩擦トルク，特に初期トルクに及ばす円管内径の影響について検討を行った．その中で，円管同士において内径を変化させた場合，中実丸棒とそれに組み合わせる円管の内径を変化させた場合，さらに，同一円管同士において摩擦速度を変化させた場合についてそれぞれ検討し，第1位相の摩擦トルクについて考察した．