セリシン加工スポーツウェアが人体生理および疲労抑制に及ぼす影響

摘要

蚕（Bombyx mori）が吐き出すシルクは，フィブロインというたんぱく質の周囲をセリシンが覆った構造となっている．シルクを用いた加工については，諸岡らが疎水性であるPVCレザーにシルクの微粉末を配合することによって吸湿性が高まり使用性能が向上したと報告している．また，フィブロインのみを用いた綿の防しわ加工に関する研究もみられる．一方，シルクを衣料素材として利用する場合，その独特の光沢や風合いを生み出すために，セリシンは不要成分として除去され，廃棄されてきた．フィブロインは衣料素材の有効成分であるため，できれば廃棄成分を利用することが環境面からも望ましいと考えられる．近年，シルクの精練廃液からセリシンを回収する技術が確立し，また，セリシンが優れた保湿性と抗酸化作用を有することが明らかになってきている．