キャシュツライン中の分岐命令数に着目したBTBの消費エネルギー削減

摘要

近年のプロセッサは命令レベル並列性を利用しで性能を向上させているが，分岐命令による制御依存がその利用を阻害する．制御依存を緩和する機構として分岐予測機構があるが，一般的な分岐予測機構では，全命令に対して分岐予測を行う必要があるため，分岐予測機構の消費エネルギーは大きく，その中でも，BTBの消費エネルギーが特に大きい．本論文では，命令キャッシュのセットとBTBのエントリを関連づけることにより，BTBへのアクセス回数およびBTBのタグを削減する手法を提案する．提案手法では，1キャッシュラインに対して固定数のBTBエントリを割り当て，BTBのタグの代わりに，当該BTBエントリが対応するキャッシュライン中の命令へのインデクスを付加する．この固定数のBTBエントリは命令フェッチ数より少ないこと，および，タグが削減されることによりBTBアクセスによって消費されるエネルギーを削減する．提案手法は，大きな消費エネルギー削減が期待できるが，キャッシュライン中に多数の分岐命令が存在する場合に分岐先予測ができないことによる性能低下を伴う．評価の結果，提案手法は0.7以下のプロセッサ性能低下のもとで，最大72.4の消費エネルギーを削減可能という結果を得た．