コリメートされた散乱線を利用するX線CT

摘要

X線CTは人体の一断面に沿ってX線源を回転させ，その透過度をX線検出器によって記録し，計算機によって断層像を再構成する医療画像診断装置である．現在のX線CTでは対象物を直線的に透過する光子のみを検出するため，散乱線を有害なものとしている．しかし，散乱線はX線と対象物の相互作用により生じるため人体の情報を持つと考えられる．そのため，散乱線を有効利用することができれば，現在と同じ被曝量に対してより高画質な断層像画像が得られ，現在と同程度の画質を得るのであれば，被曝量の低減の可能性がある．そこで，本研究では散乱線の有効利用するための1つの方法として散乱線の到来方向をグリッドによってコリメートすることでフィルタ逆投影法等を利用して散乱線を用いた断層像の再構成を実現し，これと直接線による再構成像を加え合わせる手法を提案した．提案法により再構成像上の推定値の散らばりが減少する数値例を示すことでその有効性を示す．