プリント回路基板両面に作製された二重結合共振器とその応用

摘要

プリント回路基板（PCB）の両面に作製した二重結合共振器を提案する．この共振器は，基板両面にある二つの共振器が強く結合することで生じる二つの結合共振モードに対して，低域側の共振周波数が単体の共振器のそれに比べて極めて小さくなり，かつそれら二つの共振周波数の差が極めて大きくなることを利用して，小型でスプリアス特性の良い共振器を実現したものである．本論文では，結合の特に強くなる構造のうら，オープンリング，マルチオープンリング及びスパイラル形状の二重結合共振器を取り上げ，共振器の小型化とスプリアス特性の観点から，二つの結合共振周波数を実験及び数値シミュレーションにより検討した．基板厚が小さくなるほど共振器間の結合が強くなり，低次の共振周波数f_0の低下と同時に1次と2次の共振周波数の比f_1/f_0が大きくなることを示した．また，これらの共振器の間では，共振器の占有面積を同じとした場合，スパイラル形状の二重結合共振器が最も共振周波数が低くなり，かつf_1/f_0が3以上と最も大きくなることが実験的に示された．更に二重結合共振器の無負荷Qを測定し，スパイラル形状が無負荷Qの点でも有利であることを実験的に示した．最後にスパイラル形状二重結合共振器を用いて2段チェビシェフ型帯域通過フィルタを試作し，良好なスプリアス特性が実現できることを実験的に示した．