自動車における流体技術の役割

摘要

19世紀後半に最初のガソリン内燃機関を備えた自動車が誕生して以来，自動車はその時代の技術力や社会的背景，ニーズなどに応じて，形状やメカニズムを変化させてきた．たとえば，1970年代の石油不足と原油価格の高騰から起きたオイルショックは，自動車の設計技術に大きな変化をもたらした．自動車は省エネルギーへの対応を余儀なくされ，結果として燃費向上や排気ガス規制に対応する新技術が生まれた．近年は，環境や有限なエネルギーに対する社会的な要請から，技術対象が電気自動車や燃料電池車のような新しい研究領域へとシフトしている．ニーズや規制に応じて克服すべき課題が時代とともに変化し，設封技術も変化している．これは，自動車設計の一つの要素である流体技術にとっても例外ではない．自動車の設計や製造は流体に関わる多くの問題を内包しており，流体力学の知識なくしては良い設計は難しい．本稿では，自動車の設計に関する流体問題について概観し，流体技術が自動車設計に果たす役割について再考してみたい．