無線LAN通信環境における建材型電波吸収体の設置効果に関する実験的検討

摘要

本論文では，筆者らが提案している一般建材を使った三層型吸収体の無線LAN使用環境への設置効果を検証するために，無線LANの使用を想定した部屋レベルでの，無線LAN実機を使った伝送実験とダイポールアンテナを使った伝搬実験を行った．その結果，壁の1面を金属から吸収体に換えることによって無線LAN通信速度が平均値で40％向上する一方，更に天井面を金属から岩綿吸音材や天井吸収体に換えてもあまり効果がないこと，部屋の平均遅延スプレッド値の比較から壁を金属から吸収体に置換する方が，壁の置換後更に天井を置換するよりも効果的であることなどが分かり，三層型吸収体の壁の1面への設置による無線LANの通信環境の改善効果を確認した．更に遅延スプレッドと通信速度には相関関係があり，送受信の偏波を考慮した遅延スプレッドが通信環境改善の有効な指標になることも分かった．