誤解と誤記に満ちた「百万塔陀羅尼」

摘要

この数年，美術館や博物館で展示されている百万塔陀羅尼をずいぶん見てきた。 見慣れてくると，始めの頃には気付かなかった微細な陰影や奥行きのようなものが見えてくる。 そしてその分だけ初心の感動は薄れ，感性が失われていくことを自覚する。 だから百万塔と陀羅尼それぞれを初めて見て，手にした時のような感動は二度と味わえないと思っていた。ところが昨年の秋，法隆寺を訪れて目を見開くほど驚いた。 なんと，180基の百万塔が並んでいるのである。 残念ながら撮影禁止の場所なので，拙いスケッチをしながら隅々まで視察したが，その1時間ほど胸の高鳴りは消えなかった。