観客の声援は誰に届いているのか－NBAにおけるホームアドバンテージ

摘要

本論文の目的は，NBAにおける選手個々人の成績を対象に，観客数要因によるホームアドバンテージ効果を検討することである．その際，チーム内の選手間における能力差を年俸によって判断し，社会的促進の観点から年俸の高いスター選手はど観客数が多いときに成績が高くなるのではないかという仮説について検討した．2004-2005シーズンから2014-2015シーズンのデータを分析対象として，選手の年俸と年間の観客収容率を説明変数，各年の得点とシュート（2P，3P，Free Throw）成功率を目的変数とするマルチレベル分析を行った．その結果，年俸は全てのシーズンにおいて選手の得点に正の影響を与えていた．また，年間の観客収容率がシュートの成功率に正の影響を与えるというホームアドバンテージは一部のシーズンにおいてのみ確認された．さらに，年俸と年間の観客収容率による交互作用が有意となった年もあるものの，社会的促進がみられるであろうとした仮説とは反対に，年俸が高いほど3P成功率が下がるという社会的手抜きにあてはまる結果が得られた．