ミリ波平面回路線路における漏洩，放射現象

摘要

高周波回路の高密度集積化の進展とともに，その使用周波数も高周波化が進み，現在ではミリ波から短ミリ波帯まで延びつつある．特に，ナノ構造制御技術を基にした高周波半導体デバイスの開発がその高周波化を一段と推し進めている．また，デジタル信号の超高速化に伴い，パルス幅はピコ秒からフェムト秒の域に達し，パルスに含まれる周波数スペクトルはミリ波帯を超え，短ミリ波帯あるいはそれ以上の周波数域に延びつつある．このように，ミリ波帯以上の高周波で実際の集積回路を動作させようとする場合，回路内個々のデバイスの性能は満足するものであっても，時としてそれらを結合する平面回路線路が予期しない特性を示すため，回路全体としては充分な特性の得られない結果を招くことが多々ある．このような現象の主たる要因は，筆者らによって理論的，実験的に見出されてきた平面回路線路における表面波漏洩現象および空間波放射現象によるものである．これらの現象は伝搬方向に不連続のない一様平面回路線路，つまり単にデバイス間を均一線路で接続するだけで生じるものであり，伝送電力の低下，周辺回路との干渉，漏話を引き起こし，高周波城での集積回路設計を行う場合には，必ずこれらの現象を理解，把握することが必須となる．表面波漏洩現象および空間波放射現象の基本的な発生メカニズムについてはすでに報告しているので，本稿では筆者らが最近見出した表面波漏洩モードおよび空間波漏洩モードが複数存在する場合の漏洩モード間の結合現象について述べていく．