真菌汚染による苦情食品とその喫食による健康被害

摘要

全国から寄せられた事例1,096件の解析から，1)真菌による食品の苦情は，菓子，嗜好飲料で多く，加工食品と飲料でその90％以上を占めること，2）夏に多く発生し，冬に少ないが，食品に対する信頼性が失われるような社会的要因があると一時的に増加することがあること，3)苦情食品から検出される真菌は，Penicillium属，Asperigillus属およびCladosporium属が多いこと，4)苦情食品のうちパンではA.niger が最も検出頻度の高い真菌であること，5)Wallemia属は，苦情食品のうち，菓子から多く検出されること，6)真菌汚染の疑いがある苦情食品を喫食した事例の18％（84件）で何らかの健康被害の訴えがあること，7)嗜好飲料では真菌の発生に気づかずに飲んでしまう割合が高く，このため健康被害をもたらした苦情食品に占める嗜好飲料の割合も高くなることなどが分かった．この調査は，全国的な規模で実施され，1,000件を超える事例を収集することができた．種々の事項について数値化できたところにこの調査研究の意義があると考える．