共感性が表情と音声による高次感情判断に及ぼす影響

摘要

本研究の目的は，送り手によって表情と音声で一致あるいは不一致な高次感情情報が表出された場合に，受け手による感情判断と受け手自身の感情的反応に，受け手の共感性が及ぼす影響を検討することであった．実験では，社会的文脈は同一だったとしても表現の違いによって高次な快感情とも不快感情とも解釈可能な音声動画刺激を実験参加者に提示し，送り手の感情に関する客観的感情評価と受け手である実験参加者自身の感情に関する主観的感情評価を求めた．また，実験参加者の共感性を測定し，共感性の高低による客観的感情評価と主観的感情評価の傾向の違いについて比較検討を行った．実験の結果，表情と音声による高次感情表現に基づく感情判断は，受け手の個人内要因である共感性のうち視点取得と被影響性の程度によって差がみられる可能性が示唆された．