エレクトロスピニングにおける吐出ポリマー挙動の数理モデリング

摘要

エレクトロスピニングによって作製される極細の繊維，ファインファイバーは，その細さに由来する特異な性質のため様々な応用が検討されている．しかしながらファインファイバーからなるシートは，極めて繊細な取り扱いを要する．また従来の製造技術では生産性やコストといった課題もあり，シートとして実用化された例は限られている．そこで手軽に操作できるデバイスによって被覆対象に直接紡糸する，ダイレクト·エレクトロスピニング（D-ES）の技術を開発した．可搬式の装置による直接紡糸は，実のところ既に知られている．ところが装置の多くは高圧電源やモーターのために重量や容積を要し，日常的な使用には重く，手軽には扱いづらいサイズである．その中にあってXuらは軽量でコンパクトなデバイスを既に報告している．しかしながらポリマー溶液の吐出に関して，そのデバイスはピストンを指で押す手動式であり，吐出量は指の押圧に依存して変化してしまう．すなわち吐出の定量性に課題があり，形成する被膜の精度にも懸念がある．我々のデバイスは高圧電源の他，モーターも組み込んだ上で，日常的に手軽に操作できる形態や重さ·サイズを工夫して実現した．