脳のなかの有限と無限（第3回）有限系バリ島にあふれる美の奇蹟

摘要

人間の脳に宿る＜世界像モデル＞が有限系をとるか無限系をとるか……．文化が導くその対比の中から有限の星，地球にふさわしい生存戦略を探るのがこの連載の主題です．現在の地球社会でなお支配的な「無限系世界像の上に築く適応指向文明」に対して，この連載が提唱する「有限系世界像の上に築く本来指向文明」の優越可能性を探る．－そのフィールドとして，「美という人工物の世界」には格別な有効性を期待できます．地上に現存する具体的な事例として，有限系世界像が築きあげたバリ島の美の世界は絶好のモデルを提供するでしょう．この豊穣な世界に分け入る第一歩として，今回は，無限系での適応指向が支配する近現代文明の側からバリ島の美の世界を眺め，そこに浮かび上がる数々の「奇蹟とその衝撃」にまず対面し，続く回からそのメカニズムを解き明かしていくことにします．