認知症高齢者のための記憶補助エージェントの提案

摘要

記憶障害は認知症の中心に据えられる症状であり，現在の医学で治癒困難だが，記憶補助によって障害の代償や生活支援は可能であろう．しかし，現状の記憶補助では，介護者·認知症高齢者の負担が大きく，新たな記憶補助が必要とされている．そこで，先行研究で開発した擬似的エージェントを用いて，介護者の負担を減らし，認知症高齢者が親しみやすい記憶補助を実行することを考える．しかしながら，現状の擬似的エージェントは健常者を対象としており，認知症高齢者への直接の適用が困難である．本稿では，認知症高齢者のための記憶補助エージェントを提案する．記憶補助エージェントは，擬似的エージェントと新たに開発するメモリエイドアプリと呼ばれるWebアプリを組み合わせたシステムであり，マルチモーダルなインタラクションを実現し，認知症高齢者に対して優しい記憶補助を実行することができる．また，この記憶補助エージェントの有用性を検討するため，ケーススタディとして実際の使用を想定してインタラクションを行い，認知症高齢者のための記憶補助としての考察を行う．