補聴器における音響フィードバック抑制のための適応アルゴリズム

摘要

補聴器において音響フィードバック抑制のためには適応フィルタが使われるが，従来のアルゴリズムではバイアスが生じる．本研究では周波数領域の手法を用いて，因果性を考慮した方法でバイアスを明確に表し，適応アルゴリズムの停留点を導出する．また，その安定条件にっいても述べる．入力信号がAR過程に従う場合について，音響フィードバックによる影響を連続的に抑制するために，二つの適応フィルタを用いたアルゴリズムを提案する．フォワード経路に遅延を含めることによってAR (autoregressive)過程のパラメータを同定でき，同定したARパラメータに基づく白色化フィルタを用いることで，フィードバック経路をバイアスなしで同定することができる．以上のアルゴリズムについてシミュレーションを行い，既に提案されているアルゴリズムと比べると，比較的収束が速いことを示す．