多言語社会におけるコミュニケーションモデルの一提案

摘要

本報告では地理的や歴史的に複数の言語でコミュニケーションが行われている多言語社会を対象にしている．筆者は過去3年間，北アフリカチュニジアのマルサ市における中流階層の人々を対象に言語使用状況を調査してきた．そこでは，アラビア語チュニジア方言，フランス語，それらが混在するコードスイッチングが地域社会のさまざまな側面で常用されている多言語社会であり，人々は場面に応じて複数の言語を話す複言語話者である．調査で得られた300人の会話で用いる言語と，会話をする相手との間柄の関係の分析を行うとともにインタビューも実施した．得られた知見から，多言語社会におけるコミュニケーションモデルの構築を，西成のIMV理論，SperberとWilsonの関連性理論，そしてGouldの集団行動における友人間の協力モデルを基に試みた．