骨伝導の騒音下でのマスキング効果

摘要

音声ナビは，健常者はもとより，視覚障碍者にも有効な手段になりうる．現在でも，視覚障碍者の歩行ナビを音声で行うものはあるが，ナビ音声をイヤフォンで聞くため，少なくとも片耳をふさいでしまう．視覚障碍者は，周囲の状況を「音」で把握するため，耳をふさぐことは危険を伴う．そこで，筆者らは，耳をふさがない安全·安心な音声ナビを実現するために，骨伝導の活用に着目した本稿では，気導，骨伝導の経路による周囲の騒音に対するマスキング度を確認するため，気導ヘッドフォンの聴感上の音圧と周波数特性を，骨伝導とそろえた上で，騒音下での単語聞き取り実験を行った．その結果，気導と骨伝導では，音圧，周波数特性を一致させた場合，周囲の騒音によるヘッドフォン音声のマスキング度に違いがないことを明らかにした．加えて、適切な周波数補正をすることで、骨伝導ヘッドフォンでも、気導と同程度の明瞭な音声提示をできることを明らかにした。このことは，骨伝導による「耳をふさがない音声提示」の可能性を高めることにつながる結果と考えられる．