ペアリングを用いた不正利用者追跡法への攻撃

摘要

光成，境，笠原によって提案されたペアリングを用いた不正利用者追跡法（Traitor Tracing）は、従来の方式に比べ、結託攻撃に対し強い耐性をもつなど、非常に興味深い性質をもっている。 しかし、光成らの方式は、不正利用者追跡法に対して要求される機能のうち、最も基本的な部分のみを満足する方式であり、充分な機能を有しているとはいえない。 とくに、公開鍵方式(Public-key Traitor Tracing)およびブラックボックス追跡方式(Black-Box Traitor Tracing)の要件を満足していないことは問題である。 光成，渡辺，吉田，境，笠原は、光成，境，笠原方式のさまざまな拡張方法を示し、そのなかで、ブラックボックス追跡方式への拡張も容易であると述べている。 一方、公開鍵方式については触れていない。 本稿においては、光成，渡辺，吉田，境，笠原のブラックボックス追跡方式に対する攻撃方法を示す。また、光成，境，笠原のペアリングを用いた不正利用者追跡法においては、ブラックボックス追跡方式の要件を満足することが本質的に非常に困難であることも併せて示す。さらに、光成，境，笠原の方式の公開鍵方式への拡張方式についても提案を行う。