(2z,4E)-3－メチル－2,4－ペンタジェン酸類の合成

摘要

有機化合物の中には分子式が同じであるがその性状が異なる異性体が存在することが多い．現在市販されている合成香料の中にも異性体が混在しており，異性体の混合比によって香気が異なるという問題が起こる．例えば，バラの香りとして市販されているゲラニオール／ネロール混合物では，その幾何異性体比（グラニオール(E-form)：ネロール（Z-form））は8：2である．微妙な香りの変化が要求される場合，一方の異性体のみを選択的に合成する必要がある．すなわち異性体の性状の差異により使用目的や用途が異なることを意味する．また天然物からの抽出に依存している化学製品も多く，環境保全の面やコスト削減などの工業的な側面からも新規な合成法の開発が求められている．このような問題点は上記の合成香料の分野にとどまらず，異性体を含むあらゆる化学製品にあてはまる。 したがって，安価に目的の異性体のみを供給するためには，入手容易な原料からできるだけ穏やかな条件で高選択性かつ高収率で合成する方法の開発が必要となる．