母親の疑問文発話が1～2歳児の語彙発達に与える影響

摘要

ブラジルポルトガル語話者を対象に，母親からの言語入力と幼児の語彙発達の関係を調べた最近の縦断研究では，9,13ヶ月時点での母親の疑問文発話の頻度が18ヶ月時点の子どもの産出語彙数と正の相関を示すという結果が得られている（GoncalvesBarbosaetal.,2016）。本研究では，この先行研究の知見が異なる言語でも追認できるかを検討するため，日本語話者を対象として，動画視聴場面での母親の疑問文発話の割合が幼児の産出語彙数と関係するかを縦断的に調査した。14,19ヶ月時点での母親のyes/no疑問文とwh疑問文の発話割合と，19, 27ヶ月時点での産出語彙数との分析を行ったところ，19ヶ月時点での母親のwh疑問文発話割合と27ヶ月児の産出語彙数の間に有意な正の相関が見られた。また，幼児の産出語彙数を名詞や述語などの語彙カテゴリごとに分析した場合には，母親のwh疑問文だけでなく yes/no疑問文の発話割合とも，有意な相関があるものが見られた。これらの結果から，日本語でも母親の疑問文発話が子どもの語彙発達に影響を及ぼす可能性が示唆された。