建築が街の立面をつくる

摘要

私はここ数年，環境の一要素となる建築のあり方について考えようと試みている.考えるというより，どちらかと言えば，それぞれのプロジェクトで，環境の一要素となる建築とはどういものか，どうしたらそういう建築がつくれるか試行錯誤していると言った方が正確かもしれない.そんなことを考え始めたのは，2010年に始まり2015年に完成したクレイス?ファームズ(本誌1709)あたりからだと思うが，気が付いてみればちょうどそれに並行して，今回発表するボッコーニ大学新キャンパスとラ?サマリテーヌの計画を進めていたことになる.グレイス?ファームズでは，広大な美しい風景の中にどのように建築を立ち上げたらよいか考えた.全体を小さな建物に分割して点在させた方が，建築を樹々の中に潜り込ませて自然の中に溶け込ませられそうであったが，そうすると道もないところだから工事のために相当な面積の土を掘り起こすことになり，溶け込んでいるとは言い難いと思った.迷いながら，ある程度建物を集中させながら，同時に，そこにある地形に治つたり樹木を避けて，うねるように流れる建物をつくった.大きな敷地なので，建築全体を色々なところから離れて見ることができるが，見る場所によってさまざまな体験となり，それは何か形の分からないものを見るような建築になったと思う.ある意味で，自然の中の風景の一要素のように建築が現れたと思う.