生活者によるDIY的景観向上を目指して一長門湯本温泉「おてがるリノべパンフレツト」の手法一

摘要

生活景や文化的景観といった景観概念の展開の中で， 建築物や工作物，土木構造物だけでなぐ生活者が日常 生活の中で屋外に設置する道具や什器，設備機器や物置 など（以下，道具,付属物と呼ぶ）も，重要な景観要素で あるとの認識が一般的であろう。各地の景観ガイドラインにも，これらの要素が盛り込まれることもしばしばで ある。しかし，重要伝統的建造物群保存地区のように， 歴史的風致が目に見える形で維持され，生活者の景観意 識も高く，助成制度もあるような地区をのぞけば，道具, 付属物を設置している生活者への具体的な働きかけは， 法的担保も弱く，小規模で数も多く，費用や動機面でも 難しいのが現状である。改修行為とも異なり，景観の専 門家が関与する機会も乏しい。そこで，いかに「生活者 自らの手で」「手に入れ易いもので」「一定水準の景観を 作る」かが重要となろう。すなわち，生活者によるDIY 的取組みでの景観向上につながることを目指す必要があ る。しかしこうしたことは.実践としても研究としても 蓄積が少ない。そこで本稿では，この課題に取り組むた め，温泉街のまちづくりの一環で，生活者による景観向 上を目指した取り組みを支援するツールとして制作した 「おてがるリノべパンフレツト」を紹介し，考察したい。