食品製造現場での微生物検査技術と応用第1回

摘要

食品産業に関するすベての事業者には，今，大きな変革期が訪れているのかもしれない。HACCPの制度化により，その考え方に基づいた衛生管理が事業者に求められるようになり，厚生労働省がまとめている手引書などを参考に，それぞれの事業を自社に適した形に変えつつ，その導入を検討されたことだろう。危害分析（HA）を行い，重要管理点（CCP）を設定することで製造工程管理を行う手法は，最終製品の抜き打ちの検査よりも，科学的根拠を基本とした制御がしやすく，安全性担保の点からも，このような手法の導入は合理的と考えられる。しかしながら，HACCP管理のための作業工程の手引書ができたとしても，それには生産するベき製品の工程管理が記載してあるのであり，衛生学的に安全な生産環境を担保する，と言うこととは別の話である。いくらHACCPの手引書が洗練されていようと，製造過程における衛生環境の安全性が担保されなければ，真の衛生管理はあり得ない。