サウナ浴による健常成人熱中症脱水モデルにおける アクエリアス経口補水液の水?電解質補給効果 ーランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー比較試験ー

摘要

地球規模の温暖化やヒートアイランド現象等によ る高温化が原因で発症する熱中症は,日本では2010 年ころから急激に増加している。2022年においては 例年よりも著しく早い梅雨明け等の影響を受け,5 月から9月の全国における熱中症による救急搬送人 員の累計は昨年度調査とくらべると顕著に増加した。運動時における脱水症状や熱中症の頻度は高く,たとえば市民マラソンランナーにおいては，関 節，筋肉，皮膚などの軽症のけがに次いで多い傷病 が，天候や気温，湿度などの環境によって起こる熱 中症や低体温症，また給水がうまくいかずに起こる 脱水症状だったという報告がある。運動時に発生 する労作性熱中症は，安静時における古典的熱中症 と比較して横紋筋融解，播種性血管内凝固症候群, 急性腎不全といった臓器障害のリスクが高く，命に 関わることも少なくない。経口補水液は輸液療法と同等の水?電解質?ブド ウ糖補給を目的に下痢，嘔吐，発熱といった症状が 長期に及ぶ場合や頻発する脱水症状に対してWHO が提唱する経口補水療法に基づいた食品である。輸 液療法の普及が遅れていた開発途上国を中心に, 1970年代より小児における感染性の急性胃腸炎に 伴う下痢や嘔吐の結果として生じた脱水症に対し て,有効性が報告されるようになり，使用が簡便で あり,点滴にくらべて侵襲がきわめて低いという利 点に加えて,治療効果としても，軽度から中等度の 脱水状態に対しては,点滴による補液とORS （経口 補水液）による補液の効果はほぼ同等であるなど, 経口補水液を使用することの利点が報告されるよう になったことで，近年,欧米を中心に，従来の点滴 による水分補給に替えて普及してきている。