2層マイクロストリップ線路3dB方向性結合器の広帯域化

摘要

マイクロ波信号の分配，合成を行う方向性結合器は周波数変換器，変調器，アンテナのビーム成形ネットワークなどの形でマイクロ波回路システムに組み込まれる重要なデバイスの1つであり，広い周波数帯域で動作することが求められている．これまでに，1/4波長分布結合型，ブランチライン型やラットレース型などマイクロストリップ平面回路で構成された種々の方向性結合器が提案され，その広帯域化，小型化が進められてきた．しかしながら，1/4波長分布結合型方向性結合器では線路間の広帯域な密結合化が困難であり，1/4波長分布結合型以外の形状では小型化が容易でないという問題があった．これらの問題を解決する方法として，1/4波長分布結合型方向性結合器のマイクロストリップ平行2線路を同一平面上に配置して側結合させるのではなく，マイクロストリップ線路を2層構造として上下に配置して，グランド面に設けた結合スロットを通して線路間の結合を行う構成が提案され，密結合を維持しつつ，ある程度の帯域が確保できることが示されてきた．本論文では更なる広帯域化を実現するために，3点の改良を加えた形状を提案する．まず，一点目は上下に配置した入出力線路を中心線上の上下同じ位置でなく回転対称配置にすることであり，二点目は2層構造のグランド面に設けたスロット形状を方形でなく，最適形状にすることであり，三点目は最適スロット形状内にストリップ導体を装荷することである．