IV.頭頸部がんクリニカルシーケンスの現状と課題

摘要

1990年に始まったヒトゲノム計画ではヒト1人の全ゲノム解析に13年の歳月と30億ドルを要したが，2016年には1週間以下，約1,000ドルにまで低廉化した。解析技術の飛躍的な進歩に伴い，がんゲノム情報の活用は研究目的にとどまらず，遺伝子異常の解析結果を臨床エビデンスと照らし合わせるクリニカルシーケンス，それに基づく「ゲノム医療」の時代が到来しつつある。本邦においては，まず2017年に固形がんを対象とする「次世代シークエンサー等を用いた遺伝子パネル検査に基づくがん診療ガイダンス」が日本臨床腫瘍学会?日本癌治療学会?日本癌学会の合同で発刊された。2019(令和元）年には2種類のがん遺伝子パネル検査（Onco Guide? NCCオンコパネルシステムおよびFoundation One? CDxがんゲノムプロファイル）が保険収載され，令和元年は正に日本のがんゲノム医療元年となった。現在，全国12か所の「がんゲノム医療中核拠点病院」をはじめ，33か所の「がんゲノム医療拠点病院」180か所の「がんゲノム医療連携病院」でがんゲノム医療を受けることが可能となっている。本稿では，頭頸部がんのクリニカルシーケンスにおける最新のェビデンスをレビューする。