伊良原花崗閃緑岩中に貫入する同時性苦鉄質岩脈

摘要

福岡県京都郡みやこ町犀川下伊良原の祓川河床(第1図)には伊良原花崗閃緑岩の普通角閃石斑状岩相が露出しており,それに貫入する苦鉄質岩脈が認められる(第2図).この岩脈は,細粒塊状の石英閃緑岩~ トーナル岩からなり,厚さ20 ~ 30 cmで,15 mほど連続する苦鉄質岩脈とそれを取り巻くトーナル岩~石英閃緑岩からなる細粒トーナル岩から構成される(第2図).苦鉄質岩脈はその両端部で分断化し(第2図手前),周縁部ではより細粒な急冷周縁相が認められる.さらに,細粒トーナル岩や普通角閃石斑状岩相および優白質岩相に貫入され,細粒トーナル岩に貫入する.細粒トーナル岩は普通角閃石斑状岩相および優白質岩相に貫入される.苦鉄質岩脈にはマグマが急冷してできた岩石に特徴的な長柱状普通角閃石や針状燐灰石が含まれる.これらの特徴から,苦鉄質岩脈と細粒トーナル岩は伊良原花崗閃緑岩マグマに貫入した同時性岩脈であると考えられる(柚原?眞崎2013).さらに周囲の普通角閃石斑状岩相は,分布と全岩化学組成の検討から,貫入した苦鉄質マグマと伊良原花崗閃緑岩主岩相マグマの混合によって形成されたと考えられる(柚原?眞崎2013).伊良原花崗閃緑岩主岩相からは103.11 ± 0.69 MaのU-Pbジルコン年代が報告されており,マグマの貫入時期と解釈されている(柚原ほか 2019).