潜在精巣

摘要

精巣の陰嚢内への下降は，動物種によって様々で， 牛では比較的早く，妊娠90日齢以降の胎子期のうちに 精巣が下降する。精巣の下降は，腹腔内移動，鼠径管 への移動，鼠径管内の移動の3つで完了する1)(国1)。 精巣下降には，カルシトニン遺伝子関連べプチド，イン スリン様因子(Insl)3および抗ミューラ一管ホルモン (AMH)などが関与し，精巣導帯の発育と退行を経て， 鼠径管を通り，陰嚢内へと位置する。潜在精巣は，精巣が陰嚢内に下降せず腹腔内に停留 する先天異常で，牛での潜在精巣の発生率は0.2と言 われている。広義では精巣が鼠径部皮下に逸脱する 精巣逸所症も含まれる。腹腔内に停留した精巣(停留 精巣）は，体腔内の温度が陰嚢内に比べ高いため，精子 形成が阻害されるまた，潜在精巣には片側性と両 側性があり，牛では左側の片側性が多ぐ鼠径管付近 で停留していることが多い。停留精巣は精子形成が 阻害されるものの，内分泌学的障害は軽度とされてお り，摘出せずに肥育した牛は，潜在精巣からテストス テロン（T)が合成，分泌されるため，肥育後期におい て筋肉や骨格の成長を促進し雄性化した体型となり， 行動的にも雄性化することで，肉質が低下する。