子牛の臍部疾患の診断と治療

摘要

子牛の臍部疾患は肺炎や腸炎ほどではないが， 臨床現場では比較的遭遇する機会の多い疾患のひ とつである.子牛の臍部疾患の多くは臍ヘルニア や臍部感染症とそれに伴う継発疾患，臍部の皮下 膿瘍である1.中でも，臍部感染症は生後間も ない子牛の臍帯（臍静脈，臍動脈，尿膜管）に生 じる細菌感染症で，難産や分娩介助失宜による不 適切な臍帯断裂，出生時の不衛生な環境，受動免 疫不全，臍帯の不完全な消毒などが原因で発症する2.血行性もしくはリンパ行性に細菌が全身 に播種されると，関節炎や肺炎，肝膿瘍を継発す ることもあり，生産性の低下を招来し生産者に多 大な経済的損失を与える疾病である.他の疾病と 同様に予防が重要であることは言うまでもない が，発症を疑う個体に遭遇した際には，早期診断 と適切な治療法の選択が求められる.