筋力低下

摘要

このAha!クエスチョン(AQ)で最も意識しているのが，筋力低下に痛みを伴っているかどうかである.同じ筋原性疾患であっても,痛みを伴うかどうかで,疾患のきっかけがかなり変わってくる.例えば，筋ジストロフィーであれば無痛性の筋力低下であることがほとんどであるが,体動時に痛みが増強する場合は，何らかの筋炎(横紋筋融解症，多発筋炎?皮膚筋炎など)を考慮すべきである.このAQに限らず，問診において重要な点として，「何をしたときに痛いですか?」のように,増悪因子を曖昧に確認してはいけない.曖昧に確認した場合,必ずしも正確な臨床情報が得られるとは限らないからだ.ここで強調したいのは，病歴情報には「アソビ」の部分があるということである.ある研修医が「痛みがありますか?」と聞いて,患者は「いいえ,ありません」と回答したとする.しかし,上級医が再度問診を行って「痛みがありますか?」と尋ねると，今度は,患者は「はい,あります」と答えるではないか.果たして，これは，某医療ドラマで述べられるEverybody lies （患者は噓をつく）”ということなのだろうか?それは，必ずしも患者本人の意図的なものとは限らない点に注意しなければならない.この研修医と上級医が同じ問いを投げかける前に，患者のコンテクストに沿って，そのときの状況を追体験させながら問診ができていたか,また,医師側も患者にあったことを真にイメージしながら問診が きていたのか,この違いなのである.