塗膜乾燥の理論と計算（第1報）-塗膜温度変化法による Fick型水溶液塗膜の乾燥速度曲線の高精度測定-

摘要

Fick型塗膜に基づいた乾燥モデルの妥当性を確認するためには、実証実験が必要である。ここ で、塗膜内の物質移動がFickの拡散則で支配されるとき、その塗膜をFick型塗膜と呼ぶ。一方、 水溶性塗膜は非水溶性塗膜よりも乾燥実験の面から有利である。そこで、非Fick型塗膜を与える 従来のポリビニルアルコール（PVA)に代わって、Fick型塗膜を与える新たな水溶性ポリマーの 登場が期待される。 本研究では、低いガラス転移温度を示す変性PVAを選び、その水溶液塗膜の乾燥速度曲線を、 筆者らが先に提案した塗膜温度変化法を用いて、高精度で測定した。 また筆者らは、乾燥速度曲線を用いてFick型塗膜を判別する方法についても先に提案した。測 定した乾燥速度曲線に、この判別方法を適用した結果、変性PVAは、従来のPVAに代わって、 Fick型塗膜を与える水溶性ポリマーとして相応しいことが示唆された。