嗅覚受容体遺伝子の単一発現と嗅神経細胞の軸索投射

摘要

ケモセンシング即ち，匂いや味，フェロモンなど化学情報の受容は，餌となる物質への誘引，危害を及ぼす物質からの忌避，異性や個体の識別など，動物の生存にとってきわめて重要な役割を担う。これを反映してケモセンサリーレセプターの遺伝子は，マウスの場合全ゲノムの数％を占め，免疫系の抗原受容体遺伝子をしのぐ最大の多重遺伝子ファミリーを形成している。 一方，基質についてもその種類は多様で，特に嘆覚系の場合，匂い分子の構造決定基は数万種類以上有るとされ，個々の匂いが複数の匂い分子の組み合わせおよび量比によって規定されていることを勘案すると匂いの種類はほぼ無限といってよい。 従って，せいぜい1,000種類前後の嗅覚受容体（odorant receptor：OR）を用いていかにして多種多様な匂いを識別出来るのかが，喚覚研究における課題の一つであった。