チョウジ花蕾の匂い物質の変動

摘要

食料品店のスパイス売り場にゆくと，クローブというラベルの貼られた瓶に，釘のような形をしたものが詰まっている。これが丁子であり，チョウジSyzygium aromaticum（フトモモ科）の開花直前の蕾を収穫して乾燥させたものである。肉料理のスパイスとして知られる丁子であるが，丁子の利用の歴史は古く，中国やインドでは紀元前より殺菌，消炎，消臭に用いられてきた。日本でも7世紀頃の「日本書紀」にすでに記載があるところから，遣隋使が持ち帰ったと考えられており，正倉院の帳外薬物として当時の丁子が保存されている。薬用には芳香健胃薬として用いる。匂い袋，薬玉にも利用されてきた。タバコやワインに添え嗜好品として愛飲されてもいる。また，蕾を水蒸気蒸留して得た精油は，口腔内殺菌·鎮痛·局所麻酔剤として主に歯科領域で用いられる他，アロマオイル，また刀のさび止めにも用いられる。