H医療薬科学:オミクロン株による重症COVID-19患者の特徴

摘要

新型コロナウィルス感染症 (COVID-19) U未曾有のパンデ ミックを引き起こした?新型コロ ナウィルスは流行の過程で高度に 多様化した結果,様々な変異株が 出現した.オミクロン株は，2021 年以降のパンデミックの主たる原 因変異株である.オミクロン株 は，従来株やデルタ株よりもヒト 集団での増殖速度が高い一方，病 原性が低い可能性が示唆されてい るゴしかし実臨床では，オミク ロン株感染後に重症化する患者は ー定数存在するが，そのような患 者の特徴や感染株の種類が予後に 与える影響はこれまで解明されて いない.本稿では，オミクロン株 感染後に重症化したCOVID-19 患者の特徴を明らかにすることを 目的とした前向きコホート研究を 紹介する.2021年12月から2022年3月 までにフランスの20施設におい てICUに入院した重症 COVID-19患者を前向きに観察し た.対象患者のうち，オミクロン 株感染者は148名，デルタ株感染 者は111名であった.期間中に観 察されたオミクロン株の亜型は BAI, BA1.1,BA2であった.対 象患者のうち，人工呼吸器が必要 となった患者はオミクロン株感染 者で69名(47),デルタ株感染 で63名(57)であり，両群間で 差はなかった.28日死亡率はオ ミクロン株感染者で35,デル タ株感染者で29であり，両群間で差はなかった.入院時パラ メーターを用いた多変量解析の結 果，icu入院時の年齢および重 症度が28日死亡率に関連してい た.一方で，オミクロン株への感 染は28日死亡率に影響を与える 因子として同定されなかった.こ れらの解析から，オミクロン株へ の感染は重症化後の予後に関連し ないことが示された.