［甲状腺疾患］:甲状腺機能低下症,橋本病:甲状腺腫を見逃さない!

摘要

甲状腺機能低下症の症状として,原発性?中枢性にかかわらず「無気力,易疲労感，眼瞼浮腫，寒がり，体重増加,動作緩慢，嗜眠,記憶力低下，便秘,嘎声」が診断基準に挙げられている.また，甲状腺機能低下症では原発性?中枢性にかかわらずコレステロール高値,クレアチンキナーゼ（CK）高値を示すことが多い.一方,β型甲状腺ホルモン受容体の遺伝子変異による甲状腺ホルモン不応症（resistance to thyroid hormone β : RTHβ）の症状は，多くの場合，遊離サイロキシン（free T_4 : FT_4）高値により代償されている.甲状腺機能低下症のほとんどは原発性であり,その原因の多くは橋本病（慢性甲状腺炎）である（表1）.橋本病の主症状はびまん性甲状腺腫であるため，前述したような甲状腺機能低下症が疑われる症状およびコレステロール?CK高値を認めた場合,触診やエコーで甲状腺腫の有無を確認するとよい.ただし,同じ原発性の甲状腺機能低下症でも萎縮性甲状腺炎や手術?アイソトープ治療後甲状腺機能低下症では甲状腺腫を認めない.また,中枢性甲状腺機能低下症でも甲状腺腫は認めない（表2）.一方，RTHβでは,持続する甲状腺刺激ホルモン（TSH）高値により，多くの場合にびまん性甲状腺腫を呈する.橋本病による原発性甲状腺機能低下症は出産後やヨウ素の過剰摂取などにより生じやすく,その場合は一過性甲状腺機能低下症である可能性が高い（ヨウ素制限により正常化する）.