18世紀初頭のイギリスにおける香水·香料－香水商の検認遺産目録より－

摘要

近年，ホリー·デュガンによって近代初頭の英国の歴史を香りで描き出そうとする研究書が出版されるなど，これまであまり知られていなかった18世紀のイギリス香水·香料産業の研究が行われるようになってきた。ネヴイル·ウイリアムのエリザベス1世時代から現代までのイギリス化粧品産業の研究をはじめ，最近ではサリー·ポインターによる通史など，ざまざまな視角からイギリスのパフユームに関する歴史研究がこれまでも行われてきた。それらの研究では，当時書かれた香水についての出版物などが主に参照されてきたが，それを製造した人々の職場や実際の姿を見ることができる史料は多くはない。よって，本稿では死亡時に査定された動産の目録である検認遺産目録を用いて，18世紀初頭のイギリスにおける香水·香料にくわえて香水商の実態を検討する。