技術は，試行錯誤を経て，出来上がる

摘要

筆者は機器メーカーのエンジアーとして40年ほど組織の中で仕事をした後，独立して技術士事務所を運営している。そこでつくづく感じることは，世の中は，次第に「失敗させてくれない時代」になってきているのではないか，ということである。筆者が専門としている分野は「粉体·粒体のプロセス」である。この分野では，今でもそうであるが，新しい材料を創製して行く分野にかかわることが多く，新しい物性がプロセス進行中に現れる現象／プロセス中で大幅に物性が変わって行く現象が多かった。したがって，これぞと思う実験確認を行い，スケールアップして実機を計画しても，その通りにならないことも多く，新しい現象が発現して.現場で何とかするという対応が当たり前であった。そして現場で痛い目にあって，客先に教えられ，現場の作業者に教えられ，先輩の言ったことを改めて思い出し，さらには持ち込んだ参考書を夜っぴてひっくり返して計算する経験が，「何とか出来る技術者」になる必須の条件であったと感じていた。