暑熱が黒毛和種肥育す-の生産性に及ぼす影響とその対策

摘要

家畜の生産性には様々な環境要因が関係するが，特 に近年は，気候変動に伴う平均気温の上昇が問題視さ れている。家畜は暑熱に曝されると，採食に伴う代謝 熱を減らすことで体温上昇を抑制しようとするため， 乾物摂取量(DMI)が減少する。DMIの減少は，エネル ギーや栄養成分摂取量の減少につながり.生産性低下 のリスクが高まる。実際，乳牛では暑熱環境下で飼料 摂取量の減少1,2),泌乳量の減少乳脂率の低下へ および繁殖性の低下などの影響が生じることが確認 されている。さらに，気温上昇による我が国の将来の 家畜生産性への影響を予測した研究では，暑熱の影 響が生じる地域は拡大するとともに，生産される畜産 物の生産量減少や品質低下が生じることが指摘され た。したがって，暑熱が家畜の生産性に及ぼす影響を 把握し，その影響を抑制するための対策を講じること は，家畜生産性を維持していくうえで重要である。し かし，黒毛和種肥育牛において，暑熱が生産性に及ぼ す影響はこれまでほとんど明らかにされていない。本 稿では.筆者らが実施した研究をもとに，暑熱が黒毛 和種肥育牛の生産性に及ぼす影響を解説するととも に，その影響を緩和する栄養管理技術について紹介す る。