Current Organ Topics: Lower G. I./Colon and Rectum Cancer 大腸癌 大腸癌における各種希少遺伝子異常の診断と治療Ⅰ. MSI-H/dMMR大腸癌の診断と治療

摘要

細胞分裂の際,DNAは複製のたびに一定の頻度で複 製エラーを生じるが,これらを修復する主な機構として 直接修復,除去修復,複製後修復,ミスマッチ修復があ る。ミスマッチ修復にはMLH1, MSH2, MSH6, PMS2, MLH3, MSH3などの遺伝子が関与しており’いずれか に変異が起こりミスマッチ修復機能が欠損した状態をミ スマッチ修復機能欠損(mismatch repair-deficiency: dMMR)と呼ぶ。DNA複製エラーはマイクロサテライ 卜と呼ばれる1?数塩基の塩基配列の繰り返しに生じや すいことが知られており,dMMRによりマイクロサテ ライトの反復回数に異常が生じた状態がマイクロサテラ イト不安定性(microsatellite instability: MSI)であり， MSIが複数の領域で認められる状態を高頻度マイクロ サテライト不安定性(microsatellite instability-high: MSI-H)と呼ぶ。dMMRにより腫瘍抑制’細胞増殖, DNA修復やアポトーシスに関与する遺伝子に点突然変 異やフレームシフトなど遺伝子異常が蓄積することが癌 化につながる。