超音波振動を付与した針状工具を用いた熱可塑性CFRPに対する穿孔加工

摘要

世界的な脱炭素社会の実現に向け，あらゆる分野においてCO_2排出削減の取り組みが検討されている．このような社会環境を背景とし，自動車の軽量化へのニーズがさらに高まっている．CFRP碳素繊強化樹脂）は，強化材料である炭素繊維（鉄と比較して比重1/4，比強度10倍，比弾性率7倍）と，マトリックス材料である樹脂との複合材料であり，軽量かつ高強度な部材をー体で成形できる特徴があるため，スポーツ用品から航空機材料まで幅広く利用されている．CFRP（碳素繊維強化樹脂）はマトリックスとなる樹脂の特性により，熱硬化性CFRPと熱可塑性CFRPの2種類に分類される．熱硬化性CFRPは強度，信頼性ともに航空機の採用基準をクリアしているため，その性能は十分であるが，材料コスト，製造加工コストがともに高く，航空機や高級自動車への採用にとどまっている．一方，コスト面で優位となる熱可塑性CFRPは，マトリックス材に使用する熱可塑性樹脂が，温度を上げることにより軟化する性質があるため，短時間のプレス成形に向いており，量産品の自動車への応用が期待されている．また，リサイクル性も高く，脱炭素社会に貢献できる材料として，ひときわ注目を集めている．