洋上風力発電への期待と課題

摘要

21世紀の最大の課題の一つが地球温暖化防止である．これに対する最強の切り札は，原子力発電の安全·コスト神話の虚構が崩れてしまったいま，二酸化炭素を発生しない再生可能エネルギーの積極的な導入である．主要国の再エネによる発電比率は，スペインの40%，ドイツの28%，英国の20%に対して日本と米国は15%弱にすぎない．最近の15年以上，欧州では原子力，石炭火力，石油火力の発電所は全く建設されておらず，さらに欧州の新規電源の20%は風力発電なのである．これらエネルギーを輸入に頼る国々は日本を除き再エネ導入にきわめて熱心である．このような脱炭素化が世界の大目標となる動きの中で，2019年11月にIEA（国際エネルギー機関）から注目すべき報告がなされた．IEAは毎年出しているEnergy Outlook 2019年版において，初めて再エネを大きく取り上げたのである．これには洋上風力に関する詳細な分析がなされており，Offshore Wind 0utlook2019として整理されている．