牛呼吸器感染症予防のための 微酸性次亜塩素酸水の空間噴霧と

摘要

報道機関が誤った情報を発信したため様々な誤解 が生じているが，タイトルにある次亜塩素酸水(H0C1, HC10)は，一般家庭で塩素系漂白剤として 使用される次亜塩素酸ナトリゥム（NaCIO)水溶液と は別物である1'。次亜塩素酸ナトリウムは.一般的 には次亜塩素酸ナトリゥム塩を6の濃度に溶解し た液体として市販されており，濃度60,000 ppm, pH11程度の強アルカリ性で.強い酸化作用を有す る。次亜塩素酸ナトリウムは，上水道やプールの殺 菌にも使用されているので，使用濃度や目的を誤ら なければ有効な殺菌剤である。次亜塩素酸ナトリゥ ムを消毒目的として使用する場合には、清潔な水で 0.05 (500 ppm)までに希釈して使用することが推 奨されている。しカゝし，500 ppmの次亜塩素酸ナト リウム水溶液を吸入したり，目に入れたりすると健 康に害を及ぼす可能性も指摘されており，世界保健機関（WHO)は「次亜塩素酸ナトリゥム水溶液の空 間噴霧は有害」だとしている。一方.WHOは次亜 塩素酸水の空間噴霧が有害だとは発表していない が，報道機関が次亜塩素酸ナトリゥム水溶液との区 別が出来ないまま報道したため「次亜塩素酸=有害」 の図式となったようである。実際には，「次亜塩素酸 ナトリウム水溶液と次亜塩素酸水とは別物」である。 次亜塩素酸水は，そのpHによって細かく区分さ れており，その中の微酸性次亜塩素酸水はpH 5-6.5 の弱酸性で，殺菌効果を示す有効塩素の濃度が次亜 塩素酸ナトリゥムに由来する次亜塩素酸イオン (OC1—)より約80倍高いとされている。そのため.低 濃度でも除菌効果が得られることから，空間除菌が 必要とされる病院や介護施設をはじめとした様々な 施設に幅広く導入されている。著者が，10s CFU/ mLの大腸菌や黄色ブドウ球菌を用いて試験した データでは，微酸性次亜塩素酸水1ppmであつても 1分間という短時間で全ての細菌を死滅させること