へマ卜コッカス藻色素: アスタキサンチン

摘要

食品衛生法に基づく添加物表示で「へマトコッカス藻色素」とよばれるカロテノイドがある。高い 抗酸化作用が注目されるアスタキサンチンのことで，淡水産の単細胞緑藻へマ卜コッカスを昼夜連 続の強光照明下で培養すると，綠の藻体はアスタキサンチンを蓄積して真っ赤になる。アスタキサ ンチンを使った小さな細胞の強光ストレス対策とはどんなものなのだろう。カ口テノイドは，黄，橙，赤色などを示す天然色素の一群で，微生物，植物，動物に広く存在 する二次代謝産物であり，これまで750種類以上 が同定されている。本稿で扱うアスタキサンチン は，黄色の少カロテンを基質として，ケト化m水酸化酵素が作用することにより生成される赤いカロテノイドである。カロテノイドは光合成生物 が生産する物質量の0.1%を占めるといわれ，そ の生産量は地球全体で年間約1億トンと考えられ ている。微生物と植物はカロテノイドを生合成す ることができるが，動物は体内で力ロテノイドを 生合成することはできない。動物のカロテノイド は食物連鎖に由来し，体内で代謝変換されさまざ まな構造の化合物となっている。