造血器腫瘍のフローサイトメトリー検査入門【抄録】

摘要

フローサイトメトリー(Flow cytometory: FCM)検査は、蛍光色素標識モノクローナル抗体を細胞に反応させ、フローサイトメトリーを用いて解析することで、細胞表面抗原に加えて細胞質内抗原の発現を解析する検査法であり、抗原の発現パターンから、細胞系統および分化段階などの免疫学的形質を決定することができる。造血器腫瘍は特定の分化段階にある血液細胞がモノクローナルに増殖したものであり、WHO分類では、臨床的特徴と細胞の形態所見、細胞化学染色所見に加えて免疫学的形質、細胞分子遺伝学的所見により病型が分類される。病型分類によって治療内容が異なることから、正確な病型診断が重要であり、FCM検査は腫瘍細胞の免疫学的形質を決定する上で必須の検査法である。腫瘍細胞の形態所見、細胞化学染色所見による判別が難しいリンパ系腫瘍や急性骨髄性白血病(AML)のM0、M5a、M7症例で、特に細胞表面抗原解析が有用である。また、リンパ腫の診断には病理組織診断が最も重要だが、進行が速い場合も多く、細胞抗原解析による腫瘍細胞の同定は迅速な診断に寄与する。本シンポジウムでは4例の症例発表が予定されているが、初めに入門編として、造血器腫瘍診断のためのFCM検査の実践に役立つ基礎的な知識と、典型的な症例のFCM検査結果の解釈について紹介する。