生体吸収性素材による再生肺静脈

摘要

これまで先天性心疾患の外科治療において構造 的な欠損部を修復するための血管用医材を開発し てきた。血管用医材といっても，既存の人工血管 のように一生体内に残存し血管として機能するも のとは違い，埋植時は生体吸収性ポリマーからな る人工物であるものの，生体の自己修復能により 自己細胞に置換され完全自己組織化する基材であ る。血栓や遠隔期における人工物の質的,機能的 劣化，小児患者における成長の点などを考慮する と，自己組織化により生体適合性を獲得すること により体格の変化や血流量の変化に追従でき，か つ遠隔期における合併症の回避が見込めると考え られる。さらに先天性心疾患の術後ではしばしば 不可避である再手術時の代用医材としての応用も 想起される。本研究では生体吸収性ポリマーの肺 静脈への応用の可能性を動物実験にて検証したも のであり，その結果の概略を記す。