焼結理論のための基礎知識（6）-固体中の拡散

摘要

焼結の過程，特に固相焼結の過程において，固体中の拡散が起こる。拡散は，気相，液相，固相のいずれにおいても起こる現象であり，この現象を記述するフィツクの拡散法則が知られている。フィツクの拡散法別では，相中の濃度勾配を均一化する現象として解釈されている。しかし，結晶固体中においては，濃度勾配が無視できるほど小さい場合でも，化学ポテンシャル勾配によって原子やイオンが拡散することを考慮する必要がある。本稿では，結晶固体中で起こる拡散機構を紹介し，化学ポテンシャル勾配下における固体中の拡散法則を説明する。また，自己拡散係数と相互拡散係数についても触れる。