植物環境工学の研究展望 (第+六回） 植物生育に関わる生理（物質移動)

摘要

植物は根から水や養分を吸収し，地上部では葉の光合成 作用により光合成産物を生成する.これら吸収,生成された 物質は植物体に張り巡らされた輸送ネットワークである維管束 (導管，師管）を介して各器官，組織，細胞へと輸送され， 成長や恒常性の維持に利用される.また，植物は様々な非生 物的要因（高温，低温，乾燥，強光，弱光など）に伴う環 境ストレスに曝されている.これら環境ストレスが植物に及ぼ すインパ外は植物種，器官,部位，生育ステージ，栽培方 法によって異なり，複合的に組み合わさって作用する.栽培 現場では，環境ストレスを回避もしくはその影響を軽減するた めの管理が行われている.その一方で，極端な生育抑制を生 じないレベルでの環境ストレスを付与することによって，植物の 適応機能を活用した生産物の高付加価値化を実現する技術 が導入されている.栽培技術の高度化のためには環境ストレ スに対する各器官や組織での生理学的機作や物質輸送 (転流）の基礎を十分に理解しておくことが求められる.